



更年期障害による不眠の悩みとは
厚生労働省によると、成人のうち5人に1人が不眠に悩んでおり、不眠は国民病とも呼ばれています。
不眠(睡眠障害)は、以下のような4種類に分けることができます。
中途覚醒…眠っても何度も目が醒めてしまう
早期覚醒…朝早く目覚めてしまう、そのあと寝ようとしても眠れない
熟眠障害…睡眠時間は確保できているが、しっかり寝れたような感じがしない
この中でも特に多いのが「早期覚醒による睡眠不足」です。


(引用:アステラス製薬株式会社)
40代の平均睡眠時間は6時間59分、50代は7時間7分、60代は7時間34分となっています。
つまり、この時間に比べて、睡眠時間が大幅に少ない場合は、「睡眠不足」と言うことができます。
しかし、これはあくまで平均値であり、全ての人に当てはまる訳ではありません。
「睡眠障害で眠れない夜の不安をみるみる解消する200%の基本のワザ」(井上雄一著)によると、適切な睡眠時間はなく、人によって必要な睡眠時間は異なるとされています。
「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が醒めてしまう」などのトラブルによって、精神的なストレスを感じたり、身体的な苦痛を感じるのであれば、それは全て睡眠障害と呼ぶことができます。
更年期障害で不眠になる原因


女性ホルモンの減少
(引用:早川クリニック)
私たち女性は、「エストロゲン」という女性ホルモンを分泌し、身体機能をコントロールしています。脳が「エストロゲンを作って!」と卵巣に指令を出すことで、卵巣がエストロゲンを分泌するのですが、更年期に入ると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下します。

というのも、加齢と共に卵巣の機能が低下してしまうのです。卵巣機能が低下するとエストロゲンの分泌量が低下し、脳からの指令にこたえることができなくなります。そうすると、脳が混乱してしまい、自律神経も乱れてしまうのです。
自律神経が乱れると、ストレスを感じたり緊張したときに働く「交感神経」が優位になりやすくなり、リラックスしにくい状態になります。そうなることで、睡眠障害も起きやすくなるのです。
メラトニンの減少
メラトニンとは、自然な眠りを誘う作用のあるホルモンのことです。メラトニンが分泌されると、副交感神経が優位になり、脈拍・体温・血圧などが低下します。そうすることで、脳が「もう眠る準備ができているんだな!」と認知し、自然と眠ることができます。
(引用:日本橋清洲クリニック)
しかし、年齢を重ねるごとに、メラトニンの分泌量は低下していきます。メラトニン分泌量は8~9歳あたりでピークを迎え、その後は増えることがありません。
更年期に入る40代~60代においては、10代~20代の半分以下になり、60代になるとメラトニンは微量しか分泌されなくなります。
「若い頃は何時間でも寝れたのに!」「歳を取ると早朝に目が醒めてしまう」という人も多いと思いますが、これは、メラトニンの分泌量が大きく関係しているのです。
生理前のプロゲステロン(黄体ホルモン)増加
米国名分泌学会の研究発表(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌)によると、「更年期の女性は、生理前にぐっすり眠れないと感じる可能性が高くなる」のだそうです。
生理前に眠りにつきにくくなったり、ぐっすり眠った感じがしなくなる原因は、プロゲステロン(黄体ホルモン)が増加することが関係しているとされています。
プロゲステロンは、排卵直後から卵巣で作られる女性ホルモンの一種のことです。排卵が終わったあと、受精卵が着床しやすいように子宮の環境を整える働きをしています。
プロゲステロンには、基礎体温を高め、受精・着床をしやすくします。この体温を高める働きは、妊娠したい人にとってはとても大切な働きなのですが、睡眠トラブルの原因にもなってしまうのです。
眠りにつくときには、副交感神経が優位になり、体温や脈拍が下がります。そうすることで脳が「もう寝る準備ができているんだな」と気づき自然に寝付くことができるのですが、体温が下がらないと、脳は「まだ起きているんだな」と勘違いしてしまいます。ですから、自然に寝付くことができなくなってしまうのです。
ストレス
(引用:マイナビ)
40代~60代の女性は、家庭、健康(老後)、子どもの教育、親の介護、仕事など、外的なストレスが増えやすい時期です。イライラしたりストレスを感じると、交感神経が興奮した状態になり、眠りにくくなります。
ホットフラッシュ(のぼせ、寝汗)による目覚め
既にご存知かもしれませんが、更年期障害にもっとも多い症状の一つに「ホットフラッシュ」があります。ホットフラッシュとは、顔や体がほてりやすくなり、急激に大量の汗をかく症状のことです。
ホットフラッシュは起きているときだけでなく、寝ているときにもおきることがあります。眠っている間に体がほてったり、大量の寝汗をかいてしまうことで、夜中に何度も目が醒めることがあります。
夜間頻尿
(引用:日経グッデイ)
日本排尿機能会誌によると、40代女性の約40%、50代女性の約60%が、夜中に一度トイレのために目覚めていることがわかります。特に眠りが浅い場合、尿意で目が覚めやすくなってしまいます。
不安、気分の落ち込み
「更年期障害で不安になりやすかったり、気分が落ち込みやすくなる」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、更年期に分泌量が減少するエストロゲンが関係しています。
「エストロゲンと女性のヘルスケア(武谷雄二著)」によると、エストロゲンには不安を和らげる作用(抗不安作用)があり、エストロゲンが低下するとうつ状態になりやすいと考えられる、とされています。
不安な気持ちが強くなったり、気分が落ち込みがちになると、ストレスを感じているときのように交感神経が優位になり、睡眠トラブルを引き起こしやすくなります。


更年期障害による不眠を改善する方法:お薬
睡眠薬を服用する
その名の通り、眠りにつくためのお薬を服用し治療する方法です。睡眠薬には、以下のような種類があります。
短時間作用型…4~10時間作用が続く。中途覚醒や熟眠障害に適している。
中間作用型・長時間作用型…不眠による日中の不安やストレスをやわらげる。熟眠障害や早朝覚醒に有効。
睡眠薬の種類によっては副作用が強くでたり、依存してしまう場合もありますので、必ずお医者さんに相談した上で服用してください。
また、ドラッグストアなどで市販薬を購入することができますが、処方薬とは働きが異なります。市販薬は「旅先や出張先で環境が変わるから眠れない」などの一時的な不眠には効果がありますが、慢性的な不眠を治すには適していません。
また、間違った使い方をすると「睡眠過多(寝すぎてしまうこと)」を引き起こす可能性もあります。
更年期サプリを服用する
「睡眠薬はなんとなく抵抗がある」「依存したり副作用がありそうで怖い」という人には、サプリメントもおすすめです。あくまで「食品」なので副作用が起きる危険性は薬に比べると少なく、また気軽に試すことができます。
睡眠に関する悩みがある人におすすめなのは、自律神経の調節効果が期待できるサプリメントです。女性ホルモンが減り自律神経が乱れることで「眠れない」「すぐに目が覚める」などが起きてしまうので、自律神経を整えることで、睡眠トラブルを改善することができます。
更年期障害による不眠を改善する方法:生活習慣
三食きっちり食べて、規則正しい生活をする
栄養と覚醒には、密接な関係があります。毎日ご飯を食べる時間はできるだけ同じ時間にし、また夕食は寝る4時間~5時間前にとりましょう。
というのも、人間は毎日同じ時間にご飯を食べていると、その時間が近づくだけで空腹を感じるようになります。さらには体もそれに反応し、行動量も体温も上がってしまうのです。
ですので、眠れないからと言って夜食を食べてしまうと、自然とその時間に目が覚めやすくなる、ということです。
また、あまりに空腹だと神経細胞が興奮し覚醒レベルが上がり、眠れなくなってしまいます。ダイエットや何らかの理由で空腹状態が続くのもおすすめできません。
カフェインを控える
カフェインには興奮作用があり、睡眠に関するトラブルの原因になることがあります。「眠れない」「何度も目が覚めてしまう」などの悩みがあるときは、できるだけカフェインが入っている飲み物や食べ物は控えましょう。
(引用:キリン株式会社)
「Journal of Sleep Research Volume15」によると、カフェインを摂ると、入眠にかかるまでの時間が長くなり、かつ、睡眠時間が短くなることが発表されています。
強い光を浴びないようにする
強い光には「覚醒作用」があります。夜中に強い光を浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌量が減り、脳に「もう眠れますよ」と認識させることができません。
最近では、ほとんどの人がスマホを持っていて、寝る前に見ているという人も多いと思います。しかし、スマホから出ている「ブルーライト」を浴びることでなかなか寝付けなくなる、とされています。
寝つきが悪い人は、夜に強い光を浴びないように気を付けましょう。
長時間昼寝をしないようにする
「昼寝はまったくしてはいけない!」ということではありません。NASA(アメリカ航空宇宙局)が行った実験でも、「昼に26分間の仮眠をとった結果、認知能力が34%上昇し、注意力も54%上がった」ということが分かっています。
しかし、長時間の昼寝は、夜眠れなくなる原因とも言われています。
「必ず眠れるとっておきの秘訣!(櫻井武著)」によると、昼寝の理想は20分、どんなに長くても30分以内が良いのだそうです。
昼寝をするときは、あまり長時間眠ってしまわないように気を付けましょう。
運動をする
よりぐっすり眠るために、軽く運動をして体に疲労を与えましょう。スポーツジムに行って運動をしたり、家の周りをジョギング・ウォーキングするのもおすすめです。積極的に汗を流すことで血行が良くなり、眠りやすくなりますよ。
しかし、運動は就寝3時間前には終わらせるようにしてください。夜中に運動をすると体の中心の体温が上昇し、脳が興奮して眠れなくなってしまいます。
アロマオイルを活用する
アロマオイルは、鼻から入った香りが脳の「視床下部(ししょうかぶ)」「下垂体(かすいたい)」という、自律神経の調節を行っている中枢に届き、これらの部位が活性したり静まったりすることが、科学的に証明されています。
特におすすめなのは、以下のような香りです。
朝日をしっかり浴びる
朝、太陽光をしっかりと浴びることで、体内時計を調整することができます。特に、朝の6時~8時のあいだに太陽光を浴びると体内のリズムが整い、毎日同じくらいの時間に自然と眠たくなります。
朝起きたら、まずはカーテンを開けて太陽の光をしっかりと浴びてください。部屋に日光が十分に当たらない場合や曇っている日は、家の外に数十分程度出ることで日光を十分に浴びることができます。